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「天国と地獄」

tv昭和38年の黒澤明監督作品「天国と地獄」を観る

黒澤監督の作品は白黒の方が似合う。そして自分自身の好みから言えば、やはり白黒が好きである。

前回観た、「悪い奴ほどよく眠る」「白痴」、そして今回の「天国と地獄」白黒で撮られた効果が映画に与える印象の強さは、並大抵のものではなく、幾つものショットが印象に残る。

「天国~」は、2度ほど観ているのに、若い頃のこと、どこを観ていたのか、又新作にお目にかかったような新鮮な気持ちで観ることができた。

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三船敏郎扮する靴メーカーの重役邸内に、他の重役達が訪ねており、株主総会までに、持ち株を合わせて会社の実権を握り、製品の質を落としてでもコスト減を図ろうという動きに、質を落とすことに反対する三船。この辺から、職人上がりの苦労人である彼の像が少しずつ浮かび上がってくる。そして別の手だてから、ひそかに持ち株取得を目指す彼は、話に乗らず、腹を立てた重役達は帰ってゆく。

その直後、愛息子とお抱え運転手の子が、西部劇ごっこの衣装を取り換えて遊びに出、子供の誘拐事件が起こる。この衣装の交換により、犯人は間違えて、運転手の子を誘拐してしまう。

いつも丁寧な作り込み、随所にちりばめられた伏線で、物語が進行するなか、登場人物達の生い立ちや、置かれた立場、性格などが明らかにされてゆく。

事件勃発からは、身代金要求、それは当時としては、はかくの金額。警察はパトカーを使わずデパートの車を使い、邸内に入り張り込む。三船扮する権藤と、妻、運転手達の其々の苦悩が緊迫した時間の中で描かれ、至急増資に必要な小切手を使用するか、しないかの選択を迫られる。

権藤は明日の夕方までに、増資をしなければならない。一方身代金も運転手の為に用意せざるを得ないとする妻の説得。悲嘆にくれる運転手の様子。権藤の迷う様。警察も身代金用意までは強要できない。が、権藤は結果お金を出す事を決意。

これは、真から、人としての人間性が問われるところ。自分の子で無い者への身代金用意。見るもの誰もが、思わず自分なら、どうだろうかと考えてしまうシーンだ。

それからは、権藤の態度決定の懐の大きさに突き動かされるように、警察の動きが活発になり、緻密な捜査開始。犯人の特定を絞り込んでゆく。物語の後半まで、犯人像は中々見えてこない。

緊迫した時間内に、可能性にかけて施してゆく作戦が、少しずつ詳らかに明かされる犯人への道筋。身代金の交換場所は短い時間の中で、一瞬の油断も許されない撮影場所。

ご覧になられた方は、おわかりの有名なシーン、これからご覧になる方の為にはこの辺にしておきましょう。

黒澤映画の特徴は繰り返し、お馴染の俳優陣が揃い、そこに今回は当時の新劇俳優や、新人時代の新劇俳優が重要な役割を務める。皆さんが巧い!物語の構築も巧みであり、先にも書いたように、いくつもいくつもの名シーンが、絵画のように映し出される。

45年も前の作品でありながら、物語のテーマを廻るように提起されるサブテーマとも呼べる内容が、いつも新しい。

今問題になっている格差社会が根底にあり、犯人像も今の時代には当たり前にいそうな若者像としての設定。使い捨て、消費社会を予感させる重役達との会話。物づくりの重要性に、改めて注目し始めた今。企業の乗っ取り等。背景は人類に於ける普遍的なテーマなのだろうか。

又、忘れてはならない不条理な犯罪に対比させた人としての行為から訴えかけるヒューマニズムは、権藤のみならず、妻や運転手の行動からも訴えかけてくる。セットは今でも通用するような立派な建物と内部。

いつも思うのは、三船敏郎氏の演技。冒頭からの演技、最後に出てくる権藤氏の表情の変化に目を瞠ります。最後のシーンの三船敏郎からは、国際俳優としての貫録さえ感じてしまう素晴らしい態度と表情が見られて、三船ファンの私としては感動ものでした!

勿論、妻役の香川京子の子を持ち、夫を信じる役どころの演技力、脇を固める方々、新劇畑の名演とともに、後世に残りうる「名画」と申し上げたい。

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次回は、監督と三船氏の最後の作品「赤ひげ」やはり一度は観たけれど、もう一度再会することを楽しみに、お茶の間映画館指定席で、ゆったりとした気持ちで味わいたいと、今から楽しみに待とう。

2008年10月20日

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